レーザー治療
網膜疾患や後発白内障、緑内障の治療において、レーザー治療を行います。網膜疾患や後発白内障では、レーザー治療前に、安全に照射できるように散瞳薬で瞳孔を大きく広げていきます。
瞳孔が広がることで眩しさを強く感じ、近くが見えにくくなるので、治療後は車の運転はできませんので、ご自身の運転では来院されませんように留意しましょう。眩しさやみづらさは、だいたい4~5時間持続します。
網膜光凝固術
網膜疾患に対する治療の際に網膜光凝固術を用います。病状の進行抑制や視力低下、失明予防を目的に行います。レーザー治療は、一時的な視力低下、網膜や黄斑浮腫を強めてしまう可能性があることや、痛みを伴うことがありますが、ご自身の病状を理解の上、必要があれば積極的に受けてください。レーザー治療で進行が抑えきれない場合は、より深刻な状況に対して手術療法などを検討していくことになります。
網膜裂孔・網膜格子状変性
網膜に穴が開くなど、網膜裂孔や網膜剥離を起こす場合に、裂孔の周りをレーザーで焼き固めて剥離に進展することを予防します。網膜の中心部ではなく、周辺を治療するので視力低下はほとんど起こりません。
糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症
閉塞を起こしている部分、血流が阻害されている網膜の一部をレーザーで凝固させて、新生血管の増殖を防ぎます。また、新生血管からの血液や血液成分があふれ出るのを抑制します。レーザー照射は、視力回復につながる根本的な治療法ではありませんが、黄斑への血流を確保する大事な治療で、大幅な視力低下を防ぐことが目標です。
緑内障のレーザー治療
レーザー虹彩切開術
急性緑内障発作で、瞳孔ブロックを起こしている場合に有効な治療方法です。レーザー治療前には点眼麻酔を行って、虹彩切開に使われるコンタクトレンズを装用してレーザー照射します。レーザー照射は、虹彩周辺部に行い、まぶたに覆われている上部や鼻側に行います。瞳孔ブロックを解消し、前後房の圧(力)格差をなくします。瞳孔ブロックが片目だけの場合でも、いずれ片方の目にも瞳孔ブロックが起こる可能性があるため予防的に反対眼にもレーザー照射します。合併症として挙げられるのは、瞳孔偏位、前房出血、角膜混濁、水疱性角膜症、術後虹彩円、術後一過性眼圧上昇、限局性白内障、虹彩後癒着、穿孔創の際閉塞、網膜誤照射などが報告されています。なかでも、水疱性角膜症は重篤になるケースがあり多くの症例報告があります。レーザー後は、一過性の眼圧上昇を確認するために頻繁に眼圧測定を行う必要があり、目の状態によっては点眼薬を処方しています。
マイクロパルスレーザー線維柱帯形成術(MLT)
原発開放隅角緑内障に用いられる治療法で、現状の点眼薬だけの治療では眼圧下降が見られず、点眼薬を追加する前や濾過手術を選択する前に、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)を行います。線維柱帯にレーザーを照射し、目詰まりを解消していきます。従来のSLTでは意図的に線維柱帯の色素細胞を破壊するため、術後に軽度な炎症に伴う眼圧上昇を起こす恐れがあります。眼圧が再上昇した際に再治療が必要になってしまいまった場合は、SLTは、同一部位には照射できず、追加照射には別の部位に施術しなければなりません。これらの理由から賛否両論あり、まだ一般的に普及されていませんが、手術療法の眼に負担がかかる処置の前に検討するようにしています。
一方、選択的レーザー線維柱帯形成術をマイクロパルス光凝固(MLT)で行う方法では、線維柱帯細胞を破壊しないため、眼圧が再上昇しても、痛みも少なく何度でも追加施術が可能です。当院では、マイクロパルス光凝固を用いた低侵襲レーザー治療を行っています。
後発白内障の治療
白内障手術後に安定していても、しばらくすると再び視界が白っぽくかすむ症状が出る場合があります。術後数カ月後から数年で現れ、これを後発白内障と言います。白内障手術では水晶体嚢を袋状に残し眼内レンズを固定しますが、水晶体嚢に濁りが出てくることにより眼内への光を遮るようになることで、術前の症状が再発したように視力低下やかすみ眼を感じます。後発白内障の場合、YAGレーザーの照射によって濁りを除去します。照射時間は2~3分で、痛みはありません。合併症に眼圧の一時的な上昇が起きることや、まれに網膜剥離を起こす可能性があります。いずれも定期的に受診して、術後の経過を確認する必要があります。