健康診断・人間ドックの検査項目で再検査になったら
健康診断・人間ドックを受診した際、眼科の検査項目で要再検査と診断された場合は、眼科を受診することをお勧めします。眼疾患の治療を行う上で、早期発見・疾患に合った治療を行うことが大切です。多忙な日々を過ごす中で、再検査の通知を先延ばしにして疎かにしがちですが、できる限り早く眼科を受診しましょう。
健康診断・人間ドックで指摘される診断名
高眼圧症
眼内圧(眼圧)は通常10~21mmHgが正常範囲ですが、高眼圧症はその数値が正常範囲を超えている状態をさします。眼球の内圧は房水と呼ばれる水分によって一定の幅で硬さが保持されており、正常値を超えることで各組織が影響を受けることがあります。視野が狭くなる病気である緑内障は、眼圧が高いと発症するリスクが高くなるため、視野検査が必要になります。早めに精密検査を受けることをお勧めします。
視神経乳頭陥凹拡大
視神経乳頭とは脳神経の視神経が眼球を貫いてくる場所であり、眼球内から見ると少し凹んでいます。その凹みが大きいと緑内障の可能性が高まります。検診の眼底写真では、視神経乳頭が大きく凹んでいないかを調べますが、眼科検査では構造的・機能的検査を行い、より精密に診断していきます。
網膜視神経繊維層(線維束)欠損
網膜内にある視神経繊維層が薄くなったことを所見です。緑内障の初期症状としてこの網膜神経線維束欠損が起こりますが、この所見は眼底検査で調べることが可能です。所見が進むと緑内障の原因となり、視野欠損が生じてきます。この状態になると視野検査等の緑内障の精密検査が必須となります。
加齢黄斑変性
加齢黄斑変性は、加齢が原因となって黄斑部の役割である「物を見る」ことが困難になる眼疾患です。格子状の図形を目視したときに、格子状の線が歪んで見える変視症などをはじめとした様々な視覚症状が起こるようになり、放置することで失明の危険性が高まります。日本国内では多くの方が発症する病気として知られており、50歳以上のおよそ100人に1人が発症し、中途失明の原因では第4位となっています。
黄斑前膜(網膜前膜)
ゼリー状の硝子体が、加齢が原因となって萎縮・虚脱し、網膜から剥がれます。萎縮自体は誰にでも起こる生理現象のひとつですが、硝子体は網膜の一部と癒着が強い性質にあるため、萎縮に伴い網膜から剥がれようとするときに硝子体の一部が網膜に残ることがあります。これにより、網膜の手前に薄い膜ができた状態を黄斑前膜(網膜前膜)といいます。この薄い膜が収縮し網膜を引っ張りあげることにより網膜の厚みが増し、日常生活に支障が出るような視力低下や、加齢黄斑変性と似た症状である格子状の線が歪んで見える変視症などが起こります。
眼底出血
網膜の血管の血管壁は薄いため、些細なことが原因で出血します。眼底出血を起こすと網膜の循環不全や浮腫が起こり、視力低下にいたることがあります。循環不全を起こした網膜に栄養素を補給するために、新生血管という細くて脆い血管を作ることで、眼内への大量出血や著しい視力低下が起こるきっかけになることがあります。血管が破れる疾患には、加齢黄斑変性・網膜静脈閉塞症・高血圧性網膜症・糖尿病網膜症など多くの疾患がありますので眼科検査が必要です。
視力低下
健康診断・人間ドックで行われる視力検査の多くは、今装用している自分の眼鏡を用いて検査するため、実際の最高の矯正視力よりも低い数値が出ることが多いです。眼鏡やコンタクトレンズを日常生活で使用している場合、裸眼視力と矯正視力を比較することが重要です。眼科で定期的に精密な視力検査を受けることで、視力低下や眼鏡・コンタクトレンズの度数が合っているかを確認することができます。私たちは、ご自身の視力低下に気づいていない方の中に加療すべき眼疾患が隠れていることを時々経験しますし、視力低下の原因についてもはっきりさせることがとても大事だと考えています。
中間透光体混濁
何らかの原因によって、中間透光体が濁る状態をさします。中間透光体は角膜直後~網膜直前までの総称であり、外部からの光を網膜に伝達するため、正常な状態はおおむね透明です。中間透光体混濁は、前房内炎症を伴うぶどう膜炎や加齢による白内障、硝子体出血などによって発症することがあるため、精密検査を受けることをお勧めします。
透見不明
眼底(網膜の)写真が適切に写らなかったことを示しています。原因には、角膜混濁、進行白内障、硝子体混濁などの病的な状態のほか、治療不要な異常な状態でないにもかかわらず、瞳孔のサイズが小さいために眼内を充分な光で照らせないことが理由で写らなかったことも含まれます。自分がどちらに含まれるかを判断するためには、症状がある・なしにかかわらず精密検査に基づく正確な診断が必要です。その後、遅延なく適切な治療につなげるためにも、早めの受診をお勧めします。