結膜炎について
アレルギー性結膜炎の特徴は、眼の痒み・充血・眼脂です。そのほか、鼻水やくしゃみなどのアレルギー性鼻炎との合併や、白目がブクブクに腫れ、異物感・痛みが加わるなどの症状があります。
ウイルス性結膜炎の症状は、ウイルスの種類によって症状が異なります。主に、朝目が開かないほどの多量な眼脂、強い充血、片眼から始まる症状などが特徴的です。人にうつす可能性がある結膜炎も含まれ、学童では出席停止になります。
アレルギー性結膜炎
アレルギー性結膜炎には、季節性と通年性があります。さらに、10歳頃までの男児に多く見られるのが春季カタル(アレルギー性結膜炎の慢性重症型)です。まぶたの裏に粘膜の盛り上がりが出来、激しい目の痒みと白い糸状に目やにがたくさん出る症状があります。アレルギー性結膜炎は、眼が痒くて頻繁に擦るため、角膜を傷つけて視力低下を招く恐れがあるので注意が必要です。
アレルギー性結膜炎の種類と原因
アレルギー性結膜炎は、発症時期によって季節性と通年性との2種類があります。
季節性アレルギー性結膜炎
いわゆる花粉症として発症するのが、季節性アレルギー性結膜炎です。原因のほとんどが花粉で、花粉の飛散時期に症状が現れ、花粉の時期が過ぎると症状が良くなるのが特徴です。春先に多いスギ花粉をアレルゲンとした花粉症を代表として、日本ではおよそ2,000万人がアレルギー性結膜炎だとされています。スギ林が多いことから、とくに関東や東海地方では、スギ花粉症の患者さんが多く見られます。さらに、西日本で多いのが黄砂によるアレルギーです。黄砂が降る時期に目の痒みを訴える人は、黄砂によるアレルギーの場合が多いとされています。
アレルギーが原因として発症する疾患であることから、アトピー性皮膚炎のようにほかのアレルギー性疾患を合併していることがあります。
通年性アレルギー性結膜炎
季節とは関係なく、年間を通してアレルギー症状が現れる疾患を通年性アレルギー性結膜炎と言います。主な原因は、ハウスダスト(部屋のほこり)、ダニ、カビ、ペットの毛などが挙げられます。
アレルギー性結膜炎の予防方法
アレルギー性結膜炎の原因を特定します。原因が分かったら、原因となる異物(アレルゲン)を完全除去、または接触を避けましょう。
1花粉
花粉が飛散する時期の外出や洗濯方法に工夫が必要です。外出時は、マスクや眼鏡、帽子などを着用し、花粉が目や鼻、髪の毛に付着するのを最大限防ぎます。また、帰宅したら洋服や髪の毛についた花粉を払い落し、手洗いとうがい、洗眼を行います。
この時期の洗濯ものは室内干し、或いは外に干したものは花粉を払い落としてから取り込みましょう。布団も外干しは避け、もし外干ししたら取り込んだ後に掃除機で軽く花粉を吸い取りましょう。
また、季節性アレルギーが毎年ある方などは、本格的に花粉が飛散し始める前に初期療法を行うのがおすすめです。花粉症などの症状が現れる前に、点眼剤や抗アレルギー剤によって治療を行い、眼や鼻の症状発現を抑制し、軽減することができます。
2ハウスダスト・ダニ
原因がハウスダストやダニの場合は、まず室内を徹底して掃除をしてほこりを減らします。日本の家屋はダニが発生しやすいのが特徴のため、じゅうたんやカーペットの使用は避けます。また、板の間にもダニが居ることがあるため、掃除機でこまめに吸い取り、拭き掃除まで徹底して行います。
布団はこまめに天日干しし、干したあとは軽く叩いてほこりやダニの死骸を払い落とします。取り込んだ布団を掃除機で軽く吸い取るのも有効です。また、防ダニ加工の寝具や生活用品の使用もおすすめです。
3カビ
カビが繁殖しやすい水回りなどの掃除や換気をこまめに行います。窓を開けて風通しを良くするのも有効です。エアコンのフィルターや加湿器など、カビが生えやすい場所はこまめに掃除をしましょう。押し入れ、畳、カーペットの裏などに、防カビ剤を利用するのも良いでしょう。
4ペットの毛
アレルゲンが動物だった場合、犬や猫、鳥などの動物を飼うのをやめます。家の中だけではなく、外でも動物の毛に触れないよう注意して生活することが大切です。
5アレルギー性結膜炎とコンタクトレンズ
アレルギー物質を吸着したソフトコンタクトレンズの装用によってアレルギー性結膜炎が増強して引き起こされ、アレルギー性結膜炎が悪化しタンパク汚れが増えることで、症状をさらに悪化させます。結膜炎の症状悪化の悪循環を断たなければ改善せず、使い捨てコンタクトレンズが推奨されます。
ハードコンタクトでも長期間使用することにより汚れが付着しやすく、アレルギー性結膜炎になります。痒みや目やにに加えて、レンズがずれやすくなるなど、症状が悪化してしまいます。
コンタクトレンズを普段から使用している人は、目を大切にするためにも定期的に目の検査を受けましょう。コンタクトレンズの使用にあたって、眼に合わないなと少しでも感じたらトラブル発生の前にしっかりと定期検査を受けましょう。そのまま使い続けると、眼に負荷をかけてしまいます。
ウイルス性急性結膜炎
ウイルス性結膜炎のなかでも、人にうつりやすいものを「はやり目」と言い、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎の3つが知られています。
ウイルス性急性結膜炎のなかには、人に感染させる力が強く、ときには家庭内感染や集団感染などを引き起こすものがあるので注意が必要です。
ウイルス性結膜炎の種類と症状
流行性角結膜炎(はやり目)
感染力が強いアデノウイルスが原因の結膜炎です。一般的にはやり目と呼ばれる結膜炎です。感染してから発症するまでを潜伏期間と言いますが、流行性結膜炎は1週間の潜伏期間を経て発病します。ほかのウイルス性結膜炎よりも症状が重く、充血や目やに、腫れ、痛みが伴います。発病後2週間ほどで症状が改善します。
また、結膜炎の症状が治った直後に角膜に小さな濁った点が現れることがあります。これは自然に消えてなくなることが多いですが、その濁りが瞳にまでかかってしまうとそれが消えるまでに視力低下を引き起こすことがあり、点眼治療が必要です。さらに症状が悪化すると、ドライアイや涙道閉塞など後遺症が残るなどの影響があります。この場合は、眼科での定期的な治療が必要です。小さいお子さんや赤ちゃんの場合は、急に炎症が悪化する場合があるので注意が必要です。
咽頭結膜熱(プール熱)
プールで流行することが多いため、一般的にはプール熱と呼ばれています。夏風邪のひとつで、ウイルスに感染してから発病まで5~7日間の潜伏期間があります。主な症状は、のどの痛みや発熱、全身の倦怠感、下痢などです。発病してから10日ほどで症状が改善します。プールに入る年齢、幼稚園児や学童に多く、プールに入らない赤ちゃんにはあまり見られません。しかし、このアデノウイルスの感染力は強力なため、上の子が感染して赤ちゃんに移るケースがあります。
急性出血性結膜炎(アポロ病)
急性出血性結膜炎は、アポロ病とも呼ばれ、エンテロウイルスが原因です。潜伏期間がおよそ1日と短く、鮮やかな結膜下出血が起こるのが特徴です。結膜下出血は、白目が真っ赤になるので、はじめはビックリしますが、白目に現れた出血はそのうち自然と吸収されるので心配する必要はありません。発病後は1週間で治ります。角膜に黒い濁りは出ることはありません。発病初期は眼がゴロゴロと異物感があります。
ウイルス性結膜炎の治療方法
感染したウイルスに対する抗体ができる以外、残念ながら特効薬はありません。ウイルスへの抵抗力をつけるのが一番の治療方法です。十分に休養を取り、栄養を摂取して体力を落とさないようにしましょう。また、ほかの感染を引き起こさないために抗菌点眼薬や、症状を軽減させ炎症を抑えるためにステロイド点眼薬などを使用します。ほとんどの感染原因は、眼脂・流涙の接触感染によるため、手で触れたものから感染が広がるのを防ぐために、眼脂を拭く時は、タオルやハンカチを使用せずティッシュペーパーを用いて使い捨て、多くのものに触れない、触れる前後に手洗いと消毒、除菌などが有効です。もし発症した場合は、周囲に感染を広げないように行動を注意しましょう。
感染予防対策
ウイルス性結膜炎と診断された場合、周囲に感染を広げないことが大切です。ウイルスのほとんどは、眼に触れた手やハンカチから感染しますので、手で眼を触らないようにしましょう。家庭内感染や学校などでの集団感染を防ぐためにも、手をよく洗うことが大切です。感染した際はタオルやハンカチなど生活用品は、家族とは別のものを使用し、お風呂は家族のなかで最後に入りましょう。パソコンのキーボードやドアノブなど大人数が手が触れる場所は、定期的にアルコール消毒をしましょう。他人への感染させる恐れのある眼脂が多量に出ている期間は、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱は1~2週間、急性出血性結膜炎では3~4日です。以下の点に気を付けて感染予防対策を取りましょう。
学校保健安全法では、咽頭結膜熱は第2種の感染症に定められており、「主要症状が消退した後2日を経過するまで」は出席停止になります。また急性出血性結膜炎および流行性角結膜炎は第3種の感染症に定められており、感染の恐れがないと認められるまでの間は出席停止になります。
- タオルや洗面用具は家族のものと別にしておく
- 手を頻繁に洗う。石鹸を使用して洗う。
- 休養と栄養をとって体力を落とさない。
- 人混みに出かけない。
- 医師の許可が出るまで学校や幼稚園、保育園を休む。
- 医師の許可が出るまでプールに入らない。
クラミジア結膜炎
クラミジア結膜炎の治療方法
抗生物質を含んだ点眼薬と眼軟膏、内服薬を医師の指示のもと使用して治療していきます。処方されたお薬は、必ず医師の指示に従って使用してください。クラミジア結膜炎は、抗生剤が効く網様体の段階でクラミジアを減らさなければなりません。クラミジアは、粒子状のときに宿主細胞内に入り、この状態の段階では抗生剤の効果は期待できません。クラミジア結膜炎を治療するには、長期間の薬物療法を行います。
女性がクラミジアに感染したのに治療を受けずに出産した場合、産道にあるクラミジアが新生児の結膜や咽頭、肺などに付着してしまい、赤ちゃんが発症する場合があります。生まれたばかりの新生児や乳幼児は、クラミジア感染によって結膜炎や肺炎、中耳炎などを発症してしまいます。感染した場合は、すぐに医師による検査と診察、早期の治療を行い、完治させる必要があります。
再発性角膜上皮剥離
主に角膜の外傷が原因で角膜上皮剥離を起こした場合、いったん治った後に再発を繰り返す病気です。下の層の角膜実質との接着が悪くなったことにより角膜上皮が剥がれやすくなると考えられています。症状として、起床時に目を開けたときに突然の激しい眼の痛みが出ます。その突然の痛みは打撲から数ヶ月たった後に起きます。点眼や軟膏塗布による治療を行いますが、再発予防を目的として、角膜上皮剥離が治った後も点眼加療をずっと継続することをお勧めしています。
ヘルペス性角膜炎
単純ヘルペスウイルスによる角膜炎で、幼少期の感染後神経節に潜伏していたウイルスが再活性化し、流涙、異物感、充血、角膜知覚低下とともに、樹枝状角膜炎と呼ばれる角膜上皮病変を認め、潰瘍、瘢痕化、視力低下を生ずることがあります。 水痘・帯状疱疹ウイルスによる角膜炎もあり、前頭部などに皮疹を伴うことが多いです。